2014年11月、Googleの「クラウド・パソコン」とも言うべきChromebookが日本でも発売されたのを期に、改めて、Chromium OSが、Windows XP搭載の旧機種やWindows7搭載の低スペック機の代替OSとして利用可能かを検証してみました。
「改めて」というのは、過去に何度かテストを行ってきたのですが、動くことは動いても動作が遅かったりして、実際に使用できるには至らなかったという経緯があり、ここでもう一度、動作状況を確かめたかったからです。
今回のテストで用いたのはarnoldthebat.co.ukで公開されている、Chromium OSのデイリービルドの11月11日版。
起動用のUSBメモリーを、64bit版と32bit版の両方を用意して、起動が可能か、さらにはUSBブートが行え、正常起動するものについては、ハードディスク、SSDにインストールして動作チェックを行いました。
今回試してみたのは15機種。結果は、次の表の通りとなりました。
機種 | USBブート | WiFi | トラックパッド | 状況 |
Acer Aspire V5-431P-H14C/S | 64bit版OK | ◎ | ◎ | BiosでLegacy BootにしてSecure Bootをオフにする必要あり。タッチパッドも利用可。 |
Acer Aspire S3-951-F34C | 64bit版OK | ◎ | ◎ | 正常に動作 |
Acer Aspire S750G | 64bit版OK | ◎ | ◎ | 正常に動作 |
Acer Aspire One 756-H | 64bit版OK | ◎ | ◎ | 正常に動作 |
NEC LaVie BL350/F | 32bit版で起動 | ◎ | ◎ | スリープからの復帰ができない |
Lenovo G570 | 64bit版OK | X | ◎ | |
Lenovo G560 | 64bit版OK | X | ◎ | |
Acer TravelMate 5740 | 32bit版で起動 | X | ◎ | |
Acer TravelMate 5335 | 32bit版で起動 | X | ◎ | |
Acer Aspire 5733Z | 64bit版で起動 | ◎ | X | マウスはOK |
ThinkPad X60 | 32bit版で起動 | ◎ | – | ログイン後「同期」で延々と時間がかかり実用にはならず |
Dell Inspiron 12 | 32bit版で起動 | – | – | ブラックスクリーンで動作せず。 |
Asus 1225B | 32bit版で起動 | – | – | ブラックスクリーンで動作せず。 |
Lenovo IdeaPad S205 | 起動せず | – | – | NG |
Acer Aspire One 722 | 起動せず | – | – | NG |
この中でUSBブートからHDD/SSDへのインストール後に至るまで正常に動作したものはAcer社の4機種とNECのネットブック。
他の6機種についてはWiFiもしくはトラックパッドのいずれかが動作しない結果に。
持ち運んで利用することを考えると、WiFi、トラックパッドが使えないのは実用にはツラいかと。
NEC LaVie BL350/Fについては、うまくスリープからの復帰ができません。
この機種、Windows7搭載のものを購入したのですが、非常に非力で全く使い物になりませんでした。
Chromium OS環境であれば、ストレスは大幅に軽減されており、原稿執筆などでまだまだ活躍できそうです。
購入時、Windows XPを搭載していた IBM ThinkPad X60、Dell Inspiron 12は、残念ながら動作させることができませんでした。ThinkPad X60はUSBブートは出来て、ログイン画面まで行き、WiFiにつながるまでは行くのですが、ログイン後延々とビジー状態となってしまいました。
これらXP機は、Ubuntuなど他のLinuxだと動作できており、期待していただけに残念な結果となりました。
全く起動できなかったのは2機種でした。
USBブートで正常に利用できた4機種については、HDD/SSDへのインストール後も問題なく動作しています。
起動は敏速、時間がかかるのがログイン処理の時だけ。
ログイン後も軽快に動作し、蓋を閉じてスリープしてからの復帰も迅速です。
ただし、Chromium OSはオープンソース・ライセンスであり、プロプライエタリと呼ばれるメーカーやいずれかの団体が権利を取得しているもの、例えば、Adobe Flashの再生、mp3やAACなどの音楽ファイル、mp4などの動画ファイルの再生ができません。
#この問題の解消方法は、別途書きたいと思います。
今回のテスト時点でのビルドでは、YouTubeの再生(音声含む)、Webブラウザ上でのPDFファイルの参照はできています。
また、PCに搭載のWebカメラ、マイクも動作しますのでGoogleハングアウトでの通話も可能となっています。
この一週間ほど、このChromium OSの環境で、実際に仕事をしてみました。
メール、スケジュール/ToDo管理、原稿作成、プレゼンテーション作成、Webサイトのコンテンツ作成、サイトの管理、その他、経費管理、経理、見積/請求書作成、FAX送受信などはクラウドサービスを用いているのでWebベースで可能となっています。
特に、オフライン(ネットにつながらない状況)でも、メール、原稿作成、プレゼンの下書きなどが不自由なく行えています。
実際、プロジェクターに接続してプレゼンに使ってみましたが、問題なく行えました。
動画や音声の編集などの作業は無理なので、WindowsやMacに任せるしかありませんが、BGMを聴きながら仕事をしたい時は、YouTubeのプレイリストを再生することで、十分です。
文字の入力については、日本語入力は、Google日本語入力のオープンソース版であるmozcが搭載されており快適に入力が可能です。
当初、文字入力について、英語入力モードの際に配列が英語キーボードとなってしまい、記号の入力に戸惑いがありましたが、キーボード設定を変更することで解消できました。
以上の通り、Chromium OSは、使える機種(搭載するチップセット、WiFiカードなど)が制限されてしまう事が改めてわかりました。
数年前までは、動作が重くて使い物にはならなかった事から比べると、対応機種にとっては、かなり快適な環境が手に入れられています。
(johokankyo.comからの転載)