登場当初は、「自前でブログを構築」できるツールとされていたWordPressが、今ではWebサイトの制作と運営管理を容易なものとする、「コンテンツ・マネージメント・システム」(CMS)の代表的な存在となっています。ホームページの専門担当者ではなくても、サイトを立ち上げて、運営管理していくことを可能としています。
これにより、Web制作の専門担当者がいない小規模事業者/団体が、ホームページ開設、運営管理を行う上でのハードルを、大幅に低くしています。
今回は、新たにホームページを立ち上げたいと思っている方、旧来のホームページの更新/管理の手間とコストを削減したい方を対象に、最近、なぜWordPressが多くのホームページの作成・運営に利用されているのか?その特長について、まとめてみたいと思います。
当記事の内容
(1)WordPressでは、ページ作成、サイト管理がブラウザで行える
WordPressでは、新しいページの作成、既存のページの修正、不要となったページの削除がWebブラウザ上で行えます。
従来型のWebサイトで新しい記事を作ったり更新作業を行う際には、HTML言語、CSSなどの知識とスキル、あるいは専用のWeb制作ソフトが必要となりますが、Wordpressでは、新しいページの作成、既存のページの修正、不要となったページの削除がブログ同様にワープロ感覚で、Webブラウザ上で行えます。
WordPressの進化は著しく、更新が頻繁に行われます。システムを最新にしておくことはセキュリティの観点からも重要となりますが、これらの更新作業もブラウザから簡単に行えます。
機能を拡張する「プラグイン」の追加、有効化/停止、削除もWebブラウザー上で行えます。こちらもセキュリティ対策を講じるなどで、アップデートの頻度は高いのですが、この更新作業もWebブラウザー上で行えます。
また、Wordpressは、「テーマ」を複数用意しておくことで、外観のデザイン&レイアウトを切り替えることができるのですが、この作業もWebブラウザ上で行えます。
(2)専任技術者がいなくてもホームページの制作、運営管理が可能に
1、WordPressでは、役割に応じた「権限」を設定できる
WordPressでは、ホームページの制作・運営に携わる担当者毎に「権限」(=実行できる範囲)を分けることができます。標準では、以下の5つがあります。
- 閲覧者:記事の閲覧だけが行えます。
- 寄稿者:上記に加えて、記事の編集ができます。
- 投稿者:上記に加えて、新しい記事の投稿、画像などのアップロードができます。
- 編集者:上記に加えて、カテゴリー管理、リンク管理、投稿済みの記事の編集ができます。
- 管理者:ホームページ作成/運営において、あらゆる権限を持ち、何でもできます。
一般的に、ホームページ運営に関わるチームメンバーは、「投稿者」または「編集者」となりますが、コンテンツの作成、更新作業に専念できます。誤ってサイトを消してしまったり、デザインレイアウトを壊してしまう心配は不要となります。
2、管理者の役割
管理者の役割を思いつくままにあげてみると、次のようになるでしょうか。
- サイトの構成案に従ってサイト全体を構成
- 公開後、必要に応じてサイト構成の変更
- 配置、配色、文字の大きさの調整など、サイトをデザイン
- デザインの変更、修正、レイアウトの変更
- プラグインを追加して、機能を拡張
- サーバーのセキュリティ対策
- WordPress, プラグインなどの更新作業
- サイトのコンテンツのバックアップ
- トラブル時の復旧対応
3、重い管理者の責任&負担
個人で運用する際には、一人で管理者としてあらゆる権限を持ち、サイトを運営することになります。
企業/グループで運用する場合にも、一部の担当者が、管理者と投稿者を兼ねることもあります。
管理者権限を持って作業を行うと、操作を誤ってサイトを消してしまうこともあり得ます。セキュリティ対策に関する管理をきちんと行っていない場合、ハッキングされたサイト自体を乗っ取られてしまうこともあり得ます。
それだけに管理者の責任および伴う負担は大きなものとなります。
4、管理者の役割をアウトソースするのも一つの方法
サイトの管理は不安だという企業/団体の場合、管理者としての役割を、Web制作会社などに委託するのも一つの方法かと思います。
実際、弊社で担当させていただいているホームページの中で、WordPressで運営しているサイトの約8割が、この管理業務を全面的に請け負わせていただいています。
さらに、この中の約6割は、管理者機能、編集機能の両方、すなわちサイト管理のすべてを任せていただいています。
(3)運用しながら、ホームページを改善できる柔軟性
1、メンテナンス、運用後の修正、外観の変更
WordPressの利点の一つとして「柔軟性」が挙げられます。
旧来のWebサイトの場合、一度構築すると、変更/修正を行う場合、時間/手間、さらには費用というコストが発生してしまいがちです。
WordPressならば、「走りながら考えて、軌道修正」していくことができる柔軟性に富んでいます。
刻々と変化する環境の変化に対応しながら、修正~充実を行って行けるのもWordPressのメリットです。
2、アクセス状況、Webサイトの状況を把握する
アクセスログの集計/レポートは、定評のあるGoogle Analticsと連携するのがオススメですが、対応プラグインを用いることで連携も簡単です。
これにより、いつでもアクセス状況を確認することができます。
また、Google Search Console(旧名:ウェブマスターツール)を用いて、自社のWebページの状況を把握することもできます。
3、プラグインで機能を追加できる
サイトを運用していくうちに、いろんなアイディアが浮かんで、いくつかやりたいことが出て来ることでしょう。
WordPressには機能を拡張する「プラグイン」が豊富にそろっており、さまざまな機能を追加して、ホームページをさらに充実させることができます。
- あまり多くを入れすぎると、サイト自体が重くなりますのでご注意を。
(4)「テーマ」によって外観をがらりと変更
WordPressには標準でいくつかの「テーマ」が装備されています。
この「テーマ」を変えることで、サイトの外観をがらりと変えることができます。
標準のテーマでもすぐに情報発信は可能ですが、企業の場合、ホームページは、アイデンティティの重要な一要素となるもの。後に述べる「コンセプト」に合ったデザインを施す必要があるため、「ありもの」のテーマをカスタマイズするか、オリジナルで作成する必要が出てきます。
このように、サイトの立ち上げ時には、「テーマ」づくりに大きな労力が注がれます。
一方で、時間の経過とともに、デザインに飽きてしまったり、○周年などを機にデザインを変更したい、サイトの構成を変更したい、という場合でも、WordPressなら、「テーマ」を変更するだけで、簡単にデザイン&レイアウト変更ができてしまいます。
「テーマ」の準備方法にはいくつもの方法があります。
1、オリジナルで「テーマ」を作成する
- オリジナルでテーマを作成するには、かなりハードルは高いです。かなり手間もかかります。
- スキルも時間もある方ならば、WordPressでは、参考書籍、ネット上での情報もかなり充実していますが。。。
2、公開されているテーマをカスタマイズして利用する
- ネット上には膨大な量の改変利用が可能な「テーマ」が公開されています。
- しかしそれらの多くは英語圏で開発されたもので、日本語環境では使い勝手がよくないものが多いです。
- スキルがある方であれば、カスタマイズも可能です。
3、有料のテーマを購入する
- 有料のものでも低額で入手できるものも豊富にあります。
- 日本で開発されたもので、イメージ通りに近いものが見つかれば、大きく手を加えなくても独自のテーマとして利用することも可能となることでしょう。
- ただし、ロゴ、画像の入れ替え、配色など、修正作業が必要なものもあります。
4、対応のソフトウェアを用いる
- ホームページ作成ソフトとして長年親しまれている「ホームページビルダー」では、バージョン17以降、WordPressに対応しており、「テーマ」を作成したり、ホームページの構成の変更が簡単に行えます。
5、制作会社に任せる
- 企業などで、予算が許されるならば、制作会社にオリジナルのテーマを作成してもらうのも一つの方法です。
弊社の場合、最近では、お客様ご自身でサイト管理もできるよう、「4、」のホームページビルダーでテーマ、全体構成をご用意させていただくケースが増えています。
この場合、弊社で作成させていただいたテーマファイルを、いつでもお客様に引き継げるようご用意。
サイトの立ち上げが完了し、修正、細部の調整などを行った上で、一段落ついたところで全データをお渡しし、ご自身で運営していただけるように、準備させていただいています。
(5)記事を書く場所:「固定ページ」と「ブログ」
WordPressでは、「固定ページ」と「ブログ」が用意されており、それぞれにワープロ感覚でブログに投稿するように、記事を新しく書いたり、修正/削除などが行えます。
「固定ページ」
「会社概要」、「製品/サービス」内容、「費用/料金表」、「アクセス」方法、「問い合わせ」方法など、あまり更新することがないコンテンツを置いておく場所となります。
「ブログ」
通常のブログなどと同じように、日々アップしていく記事を置いていく場所です。
記事は「カテゴリ」によってグループ分けをすることができます。
このカテゴリごとにメニューを作成し、画面の上部、下部、サイドにメニューとして配置することができます。(詳しくは後述)
カテゴリ分けされた記事は、標準では、新しい記事が次々と上部に、古い記事は下部に置かれていきます。
#「カスタム投稿タイプ」という機能で、「ブログ」以外にも「ニュース」、「製品」、「サービス」など、様々な投稿タイプを追加することも可能です。
まずは、「固定ページ」と「ブログ」との機能の違いを理解し、それぞれの特長を活かして使い分けを行うよう、構成を考えることが一つのキーポイントとなります。
(6)メニューの配置
WordPressでは、「メニュー」の配置、修正、削除などもWebブラウザー上で行えます。
クリックするとジャンプできる「メニュー」ですが、画面の上部、下部、そして左右のいずれかに配置されることが一般的となっています。
「固定ページ」の内容をメニューとして配置したり、ブログ記事をカテゴリーごとに分類させてメニューとして配置することができます。
この「メニュー」の配置は、ユーザーの使い勝手を左右する重要な要素となります。
この「メニュー」の順列、配置、デザインなどを考えることもキーポイントとなります。
(7)コメント機能、SNS連携でユーザとのコミュニケーション
ブログで読者とのコミュニケーションを図る機能として「コメント機能」がありますが、WordPressでも同様に対応しています。もちろん、無効にすることも可能です。
最近では、TwitterやFacebookなどのSNSと連携してユーザーとのコミュニケーションを図る手段が多く利用されています。
まずは、サイトのコンセプト、構成をしっかりと考える
柔軟性に富み、公開後にいくらでも修正が可能なWordPressとは言っても、やはり最初は肝心。一般に広く公開するわけですから、はじめにしっかりとコンセプトを定め、全体の構成を考えることが重要です。
コンセプト
- サイトの名称
- サイトのキャッチフレーズ
- ドメイン名(ホームページ・アドレス)
- サイトを開設する目的
- 対象となるユーザー
- 他者/他社との違い、自分/自社の強み
- 特に強調したいものは?
サイトのテーマ(デザイン)の方向性
- 文字の大きさ
- ロゴタイプ
- 色調
- どんなメニューを配置するか
- どこまで情報を開示するか(代表のプロフィール、取引先情報など)
- 問い合わせの対応をどうするか(電話、メール、コメント機能)
- アクセス方法(地図などの掲載)
WordPressでホームページを構築に至るケース
弊社では、多数の企業/団体のホームページの運営管理を担当させていただいていますが、今ではWordPressをベースに構築するケースが大幅に増えています。
初めてホームページを立ち上げる場合
- とにかくコストを抑えたい。そのため自社/自分で全てを担うが、管理に手間をかけたくない。
- 記事の作成、更新に専念したい。デザイン、管理作業は外に任せたい。
- 記事の原稿はメールで送るので、記事の更新、管理作業のすべてを外部に任せたい。
旧来型のホームページの移行
- Web担当者の負担が大きい。負荷を分散させたい。
- 記事の更新作業が面倒。Web担当者に依頼しなくても新しい記事をアップできるようにしたい。
- 新しい記事をレビューし、承認を得た上で記事の公開ができるようにしたい。
- SEO対策、セキュリティ対策に不安がある。
以上のようなケースが、WordPressでホームページを立ち上げたり、移行する理由の典型的なものとなっています。
まとめ
今回は、新たにホームページを立ち上げたいと思っている方、旧来のホームページの更新/管理の手間とコストを削減したい方を対象に、最近、なぜWordPressが多くのホームページの作成・運営に利用されているのか?その特長について、まとめてみました。
前述のとおり、WordPressでサイトを構築すれば、記事の投稿/更新作業を行う「投稿者」、「編集者」権限のユーザにとって、難しいことはありません。
旧来のサイトほどではありませんが、「管理者」に大きな責任と負荷がかかります。
今後は、「管理者」となる方を対象の中心として、管理作業について順を追ってご紹介していければと思います。